ワインの醸造工程とは?

ワインの醸造工程とは?
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ワインの醸造工程は、大きくわけると原料加工、発酵・熟成、ろ過の3工程にわけられます。ブドウをアルコール発酵させて造る、ほかのお酒と比べて造り方がとてもシンプルなワインですが、ではその味わいの違いはどこからくるのでしょうか?そんな疑問について解説していきます。

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赤ワインの醸造工程

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赤ワインは、黒ブドウを原料として、果皮や種子ごと果汁を発酵させることで造られます。赤ワインの醸造の流れを見ていきましょう。

収穫

黒ブドウの収穫時期は、北半球の場合9~10月ごろが一般的です。ブドウの糖度や酸度、ポリフェノール量などさまざまな観点から成熟度を判断する必要があり、収穫のタイミングは品種や生産者、その年の気候などによって異なります。

収穫方法は、成熟度を確認しながら人の手で収穫していく手摘みと、機械を用いて収穫する方法があります。収穫されたブドウは、酸化を防ぐため迅速に醸造所へと運ばれます。

選果(せんか)

収穫したブドウには未成熟の粒や腐敗した粒も混ざっているため、これらを取り除く「選果」を行います。不適切な粒を除去する選果は、ワインの品質を高めるために大切なプロセスといえるでしょう。

手摘みで収穫をする場合は、収穫の段階でできる限り不適切なブドウを除き、醸造所で再度選果をするという二段階のプロセスを踏むのが一般的です。また、人の手ではなく最新技術を搭載した機械を用いて選果を行う場合もあります。

除梗(じょこう)・破砕(はさい)

ブドウからヘタや柄の部分である果梗(かこう)を取り除くことを「除梗」といいます。「除梗」は、ワインの風味をよりよくすることなどを目的に行われますが、生産者によっては「除梗」をまったく行わない場合や、一部のみ行う場合もあります。

「破砕」は、ブドウ果汁を搾りやすくするために果粒を軽く潰して果皮を破る作業です。専用の機械を使用すれば、「除梗」から「破砕」までを一気に行うことができます。

主発酵・醸し

ブドウの果汁を果皮や種子とともにタンクや木桶に入れ、アルコール発酵させます。アルコール発酵は、ブドウ自体が持つ天然酵母のみで行う場合と人工酵母(ワイン醸造用に培養した酵母)を添加する場合があります。

これらの酵母の働きによって、ブドウの糖分がアルコールと炭酸ガスに分解されます。発酵の際は温度が上昇しますが、高温の状態が続くとワインの風味が損なわれる懸念があるため、温度管理が重要です。

赤ワインの発酵では、果汁を果皮や種子と一緒に漬け込むことで、果皮や種子に含まれる色素成分のアントシアニンや渋味成分のタンニン、香気成分などを抽出します。これを「醸し」(=「マセラシオン」)といいます。

「醸し」を効果的に行うための作業として、液中に浮いた果皮や種子を櫂(かい)で沈めて攪拌する「ピジャージュ」や、ポンプなどでワインを循環させる「ルモンタージュ」などが行われます。

圧搾(あっさく)

アルコール発酵の完了後、ワインをタンクから抜き出します。圧をかけることなく自然に流れ出したこのワインは「フリーラン・ワイン」と呼ばれ、繊細な味わいがあります。

「フリーラン・ワイン」を抜き出した後、タンク内の果皮や種子を圧搾機でプレスし、ワインを搾り出します。こうして得られるワインは複雑な味わいがある一方、雑味も多い傾向があります。圧搾で得たワインは「フリーラン・ワイン」にブレンドされるなど、生産者によって使い分けられます。

マロラクティック発酵(MLF)

「マロラクティック発酵」とは、乳酸菌の働きによって、ワイン中のリンゴ酸が乳酸と炭酸ガスに分解される現象のことです。「マロラクティック発酵」は木樽や醸造設備に棲む乳酸菌の働きで自然に生じるものですが、近年では人工的に乳酸菌を加えることも多くなっています。

「マロラクティック発酵」によってワインの酸味が和らいでまろやかな味わいになるとともに、香りや味わいの複雑さを高める効果が期待できます。

熟成

発酵が完了したワインは、樽やタンクに入れて熟成させます。フレッシュな味わいのワインを造る場合はステンレスタンクを使用し、樽を一切使わない場合もありますが、多くの赤ワインでは木樽(や木樽の代替品)を用いた樽熟成が行われます。樽熟成をすることで、ワインの味わいがまろやかになる、風味の複雑さが増す、樽香がつくなどの効果が期待できます。

なお、熟成期間中には、蒸発したり樽に吸収されたりして目減りしたワインをつぎ足して補填することがあり、この工程を「ウイヤージュ」といいます。

滓引き/澱引き(おりびき)

「滓引き」とは、樽やタンクの底に沈殿した酵母や果肉片などの滓を残して、上澄みのワインを別の容器に移す工程のことです。この作業は、熟成期間中に適度な間隔を置いて数回行います。

清澄(せいちょう)・ろ過

「清澄」は、卵白やゼラチンなどの清澄剤を使用してワイン内に浮遊している滓を取り除く作業のこと。また「ろ過」とは、遠心分離器やミクロフィルターなどを用いて、さらに細かい不純物を取り除く作業のことです。

「ろ過」まで行うことで、滓のないクリアで美しいワインが造られるものの、香りや複雑味が損なわれるというケースもあります。そのため、生産者によっては、極力「ろ過」を行わない「ノンフィルター」方式を採用しているところもあります。

瓶詰

ワインを瓶詰めし、コルクやスクリューキャップで密閉します。ワインによっては、味わいの複雑性を高めるために、瓶詰め後に「瓶内熟成」をさせることもあります。ラベルは、出荷の直前にボトルに貼られます。

白ワインの醸造方法

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白ワインは、白ブドウまたは黒ブドウを原料に、果汁のみを発酵させて造られます。赤ワインの製法との大きな違いは、果汁を搾り出す「圧搾」をしてから「アルコール発酵」を行うこと、果皮や種を取り除くこと、「醸し」(=「マセラシオン」)の工程がないことなどです。

白ワインの醸造工程では、ブドウを圧搾して得られた果汁を低温で数時間置き、不純物を沈殿させる「デブルバージュ」という作業を行います。その後、上澄みの果汁に酵母を加え、アルコール発酵させます。

一部の白ワインでは、発酵後に赤ワインと同様「マロラクティック発酵」を行います。また、白ワインの熟成工程では、ワインと滓を撹拌して滓に含まれる旨味成分を抽出する「バトナージュ」という作業を行うことがあります。

ロゼワインの醸造方法

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ロゼワインの造り方として、よくある誤解が「赤ワインと白ワインを混ぜる」というもの。じつは、この製法は「伝統的な製法を脅かす」という理由から、シャンパーニュを除きEUでは禁止されています。

ロゼワインの造り方は、「セニエ法」「直接圧搾法」「混醸法」の3種類が主流です。それぞれかんたんに説明しましょう。

【セニエ法】
赤ワイン用の黒ブドウの果汁を果皮や種子とともにタンクに入れて「マセラシオン」し、薄く色づいたところで上澄みの果汁のみを発酵させます。

【直接圧搾法】
赤ワイン用の黒ブドウを使い、白ワインのように果汁だけで発酵させます。ロゼの色は、搾汁の際に果皮のアントシアニンが果汁に若干混ざることでもたらされます。

【混醸法】
発酵前の黒ブドウと白ブドウを混ぜ、赤ワインと同様に発酵と「マセラシオン」を同時進行させます。おもにドイツで見られる製法です。

なお、近年では、ややオレンジがかった色をしたオレンジワインも高い人気を集めています。オレンジワインは、原料に白ブドウを使用し、赤ワインのように果皮や種を一緒に漬け込んで発酵・醸造します。

スパークリングワインの醸造方法

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スパークリングワインの造り方は、国や地域によって、さまざまな手法があります。大きく分けると、ワインに糖分と酵母を加えて二次発酵させて生じた炭酸ガスを瓶内に封じ込める方法と、炭酸ガスをワインに直接吹き込む方法の2種類があります。

前者の製法は、作業工程の違いによってさらに以下の4つに分けられます。それぞれの違いを飲み比べてみるのもたのしいでしょう。

【トラディショナル方式】
瓶内で二次発酵を起こさせる方法です。シャンパーニュなどに用いられるため、別名「シャンパーニュ製法」とも呼ばれます。

【メトード・リュラル】
二次発酵途中のワインを瓶詰めし、残りの発酵を瓶内で行う製法です。おもにフランス南西部で造られるガイヤックワインなどに用いられます。

【トランスファー方式】
「トラディショナル方式」を簡略化した製法で、おもにドイツ産スパーリングワインのゼクトなどに用いられます。

【シャルマ方式】
密閉タンク内で二次発酵したワインを瓶詰めする製法です。おもにスプマンテなどに用いられます。

ワインの品質はブドウの品質が鍵

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ワインは、ほかの酒類と比べて、とてもシンプルな手順で造られます。なぜならワインの原料となるブドウには、アルコール発酵のもととなるブドウ糖が多く含まれていて、あまり手を加えなくても、自然にお酒へと変化するためです。

ほとんどのワインは、醗酵から瓶詰めまで、すべての工程で一滴の水も加えないで造るピュアなお酒です。工程がシンプルだからこそ、ワインの仕上がりはブドウの品質に大きく左右されます。「ワイン造りの8割がブドウで決まる」といわれるのは、そうした理由からなのですね。


ワインは、シンプルながらブドウの魅力を最大限に活かす製法で造られています。赤・白・ロゼ・スパークリングといったワインの製法やそれぞれに凝らされた工夫を知っておくと、ワインがさらにたのしめそうですね。

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